第17章 二人の出張
「なぁに?そんなに見つめちゃって、もしかして僕に見惚れてた?」
からかうようにして言われたその言葉は、私の表情を一瞬にして赤面させた。
「違うよ!!」
いやいや違くないだろう。と思いながらも、そんな可愛げのない返事にも、悟は満足そうな顔付きを見せると。
「ふふっ、本当にヒナは素直で可愛いね」
まるで素直で可愛いからかけ離れた私の行動でさえ、悟からしたら素直で可愛いらしい。恋は盲目というやつだろうか。それとも悟には私がそう映って見えているということなのだろうか。
こんなにも可愛いと言う言葉をさらりと言ってしまう悟を、少しは見習わないとと思いながら、目の前の悟にドキドキしながらも赤くなった頬を元に戻すので精一杯だった。
「水着すっごく似合ってるね、めちゃくちゃ可愛い」
「…ありがとう」
「そのシャツ脱いでくれたら、もっと最高なんだけどな」
「今は恥ずかしくて無理!!海に入る時脱ぐから…」
「楽しみだなぁ、早く見たい」
「やめて…余計恥ずかしくなる!楽しみにしなくて良い!」
クスクスと笑う悟に手を引かれる。彼の反対の腕には似合わないパイナップル柄の浮き輪が一つ抱えられているのは、先ほど二人で選んだものだ。