第16章 本当のところ
「悟違うの!傑は何もしてないから!というか私が抱きついたの!!」
そんな言葉に、今度は私を見下ろしていた瞳がカッと見開く。
「あの日…悟と女の人が仲良く腕組んでるの見て…ズタボロで泣きついたというか…それで傑が話を聞いてくれたの。でも本当ただの突進みたいなハグだよ?」
私の思わぬ話に言葉が出ないのか、傑を睨み付けていた身体をゆっくりと離す。
「でも傑はね、悟を疑う私に言ってくれたんだ。悟を信じてって。悟は絶対に私が嫌がることはしないからって。そのおかげでその日は落ち着くことが出来た。まぁでもまた次の日悟と腕を組んでる女性を二日連続見て動揺したどころの話じゃなかったけど…」
まさかの親友のナイスプレーに、さすがの悟もここで怒りをぶつけるのは違うと思ったのか。そもそも自分が原因で起きた出来事じゃないかと考えたのか、それ以上何かを言う事もなく。
ただ少しだけ口角を上げるようにして「傑もたまには良いこと言うじゃん」と呟き私の肩を引き寄せた。
「でも、今後はぜぇーったい何があってもそんな事許さないから。傑も二度とヒナに触れるなよ?」
「はいはい、触りませんよ。命が惜しいからね」