第16章 本当のところ
「そうだったんだ…」
「いや、本当マジで何やってんだって感じだよね僕。ヒナの気持ちなんて無視して勝手にこんなことしてごめん!!当主の権力これでもかってくらい使ってごめん!!」
ペコペコと何度も頭を下げて謝り倒す悟を見て、悟が頭を下げてるところ初めて見たなーなんて呑気な事を思う。
だって別に私は怒ってなどいない。
何故ならあの時、最終的に悟と婚約するということを選んだのは私だ。
逃げようと思えば逃げられた、嫌だと言おうと思えばそんな事いくらだって言えた。
だって悟は、私が本当に嫌がる事は絶対にしないから。
あの時悟の手を取ったのは私だ。
悟の隣にいる事を選んだのも私だ。
そして悟が私と婚約しようと思ってくれたから、今こうして私達は想いを通わすことが出来た。そんなの攻めるわけがない。怒るわけがないのだ。
今にでも土下座をしてしまいそうなほど焦っている悟に、くすくすと声を出して笑えば。そんな私達を見てやっぱり傑と硝子は呆れたように、だけどどこか少し優し気な表情を見せた。
「大丈夫、怒ってないよ。だって悟のおかげで、今はこうして想いが通じ合ったんだから」