第16章 本当のところ
「婚約する話を聞いた時はどうなるかと思ったが、上手くいったなら良かったな。無理矢理婚約話を取り付けてきた甲斐があったじゃないか、五条」
コーヒー缶を口へと運び、気怠げに口を開いた硝子は白衣のポケットへと手を入れた。
「ちょっと硝子ストップ!まだその話しはしてないから!」
私からバッと勢い良く体を離した悟は、慌てたように体制を元に戻し硝子へと大きな声を出す。
「そうだったのか?それは悪かった。てっきりもう言ってるものだと」
「無理矢理婚約話を取り付けてきた…?」
それは一体どういうことなのだろうか。元々私達は呪術界で良いとこの家系である家同士の政略結婚だったはず。呪力を多く持った子を産むためだ。そんなこと、この世界じゃそう珍しくない。でもそれが実は…悟が無理矢理婚約話を取り付けた…?
初耳だ。それはそうか、当然か。だって悟にメリットなんて何もない。
悟ならば、五条家に嫁ぎたい女性など選びたい放題だろうに。それを蹴ってまでわざわざ私と婚約してくれたというのか。
「ヒナごめんね!怒ってる!?怒ってるよね??でも僕いつかヒナが僕じゃない男と結婚するとか耐えられなくて…それで実は五条家当主の権力で君との婚約を取り付けたんだ…」