第14章 見たくない
「…何言ってるの?」
唖然とする私を、悟は少しばかり体を離して言葉を続けた。
「今回の任務の事だよ…ヒナはその件について怒ってるから僕と婚約破棄したいって言ったんじゃないの?しかも。あんな光景を見せちゃったしね。元はと言えば僕のせいなんだ。五条家当主の婚約者である君を誘拐すれば、僕の弱点を握れるとでも思ったんだろう。呪詛師らしいクソみたいな作戦だよね。まぁ結果トップの娘から情報を引き出すのも成功したし、二度と表立って歩けないようにしてやったけど。力任せに破壊しなかったのは、本当奇跡に近いと思うよ。でもそれも、ヒナを不快にさせたんじゃ何の意味もないけど…」
「…今、任務って言った?」
「え、そう…だね。言った」
「え?……浮気じゃなかったの?…あの人、悟の彼女じゃないの…?」
唖然と目を丸める私に悟は少しの間を開けたあと、私動揺碧色の瞳を丸めると、白く綺麗なまつ毛をこれでもかと言うほど大きく開いた。
「…僕が浮気?…彼女?」
その言葉はぽそりとちいさく落とされ、そして消えていく。
きっと周りから見たら、この時の私達は信じられないほど滑稽だったと思う。
心底驚いた顔をしている最強呪術師と、心底唖然としている私は。