第14章 見たくない
もう無理だ。もうずっと苦しくてどうにかなってしまいそうだ。
嫌だ、嫌だ嫌だ。
悟が眉間にシワを寄せるのも。私の腕を掴んだままなのも。この甘ったるい香りも。もう全部全部嫌だ。
「もうやめてよ!!嫌い!悟の事なんて大っ嫌い!!」
今まで何度も喧嘩したことはあっても、こんな事を口にした事などなかった。
だってそんなこと、一度も思ったことなんてなかったからだ。
むしろ私にとって悟は、とても大切でかけがえの無いない存在だったのだから。
私の酷くキリキリとした声に、悟は大きな舌打ちを落とすと、そのまま私の腕を引き強く抱きしめた。
「…ならなんで、そんな顔してんだよ」
「…………」
「嫌いって言うなら、何でそんな顔で泣いてんだよッ」
上から降ってくる悟の声は、とても苦しそうで辛そうだった。
どうして…苦しくて辛いのは私のはずなのに。どうして悟がそんなにも辛そうなの…