第14章 見たくない
何故悟が怒るのか、訳がわからなかった。
どちらかといえば、怒りたいのは私の方だ。
仲良くやっていけると思っていたのに。二人で過ごす毎日が楽しいと思っていたのに。
それが無くなったのは悟のせいじゃないか。
そこまで思ってハッとする。いや、違う…私が悟の将来の相手として選ばれなかっただけだ。悟に女性として…見られていなかっただけだ。だから悟は他に好きな人が出来た。私ではなく、あの綺麗な女性を好きになった。
もうここにいる気にもなれなくて、悟の顔を見ているのがたまらなく辛くて。
握られてた腕を振り解き、そのまま走り出した。
「まだ話は終わってねぇよ」
まるで昔の口調に戻ったようなその言葉と共に、振り解いた腕は再び強く握られる。
だけどもう限界だった。もう何もかもがぐちゃぐちゃで、張り裂けるみたいに痛くて、苦しくて、もう嫌だと、そう思った。