第14章 見たくない
それが、たとえ…
あの家の扉を開けて「ただいま」という事がなくなっても。
「ただいま」とニコニコとしながらリビングへ入ってくる悟に、笑顔で「おかえり」と言えなくなっても。
二人で食卓を囲みながら、一緒に作った温かいご飯が食べれなくても。
悟に後ろから抱きしめられながらソファーで今流行りの映画を観ることがなくなっても。
二人でベッドで今日あった事を話しながらクスクスと楽しそうに笑い合う事が出来なくても。
ジッと甘い瞳で見つめられ、その瞬間柔らかな唇が触れ合う事がなくても。
少しだけえっちな事をして、イタズラ気な悟の表情にむず痒くも温かな気持ちになる事がなくなっても。
たまらないように「…ヒナ」と甘美に名前を呼ばれ、これでもかというほど優しく、互いを抱きしめ合えなくても。
そして、どこまでも甘く…
まるで私を愛おし気に見つめてくる綺麗な瞳が見れなくても。
それでも私達は変わらない。
ただの幼なじみだった
椿ヒナと
そして
五条悟に
戻るんだ。