第14章 見たくない
「は?」
悟の低い声が辺り一面に響き渡る。
もしかしたら、自分がフラれたみたいになって不快だったのかもしれない。こんなことなら悟に言われるまで待った方が良かったかな?
まぁいいや。私はまた胸をトントンと叩くと悟の横を通り過ぎ歩き出そうとした。
あ、そうだ。部屋に行って読みかけの書類を見ちゃわないと。すでに彼から意識を晒しタブレットへと視線を移していると、右手が強く引かれ身体がぐらりと揺れる。
それが悟によって引っ張られたのだという事はすぐに理解できた。
引かれた衝撃でタブレットが大きな音を立てて落下していく。あー画面割れるかも。多分呑気にそんな事を考えていたと思う。
悟の横を通り過ぎようとしていた身体は、悟の静止によって叶わなかったわけだが、私は特に動揺することもなくされるがままだった。
「…何言ってんの、婚約破棄って何」
何って…言われても。もしかして婚約破棄するタイミングが今じゃなかったとか?そういう意味?だけどいくら何でもそこまで悟に優しく合わせる必要があるだろうか。いや、ないでしょ。
いつもよりも少しばかり乱暴な悟の口調が、苛立っている事を表している。