第14章 見たくない

「そのままの意味だよ」



「そのままの意味って…分かんないんだけど」




いつもは頭の回転が早い悟が、どうやら今回の件に関しては上手く理解出来ないらしい。何故だろうか。



もうこれ以上何を言ったら良いのか分かんないな。どうやって説明したら良いんだろう。すごくシンプルに伝えたつもりなのに。というか、そもそも悟の希望を叶えたのに。




「だから、婚約破棄だよ。婚約を破棄しましょうってこと」




とにかく簡単に、そうシンプルに伝えた私に、悟はピクリと口角を揺らすと、聞いたこともないほど低く恐ろしい声を出した。




「だから、は？っつてんだ。婚約破棄ってなんだよ、ふざけてんの？」




ふざけてるわけがない。ふざけられるわけがない。こんなこと…ふざけて言うような事なわけがない。




悟の恐ろしく低い声に思わず肩を揺らすと、悟は付けていた目隠しをゆっくりと下す。



何故目隠しを外したのか、そんなの聞かなくてもわかった。




何故なら、その瞳が心底怒りを含んだ色をしていたからだ。