第14章 見たくない
「少し、話そうか」
あぁ、そうだね。話さないといけない。
婚約破棄しましょうって。
私は無言のまま悟を見上げれば、悟ピクリと肩を一瞬揺らした後そのままギシギシと鳴る廊下を歩き始めた。
着いた先は職員寮を出てすぐのひらけた場所だ。まぁここで寝泊まりしている人物はほとんどいないから、こんな時間に誰も来ないだろう。
こんな場面周りの人に見られてでもしたら、その人が可哀想で仕方がない。婚約破棄している場面を見てしまうなんて、それはそれは今日一日の後味が悪いだろう。
だから私は、悟よりも早く口を開いた。もし誰かが来てこの場面を見てしまったら心底気まずいだろうから。
きっと私からこの話題をふれば、悟も早々と話を終える事が出来るとか思ったからだ。
「大丈夫だよ、分かってるから」
そんな私の言葉に、悟は驚いたように小さく口元を揺らした。