第14章 見たくない
その日はとても忙しなく働いた。
その次の日も。
その次の日もだ。
そして私が高専の職員寮に寝泊まりするようになって4日目の深夜だった。
タブレットを片手に寮への廊下を歩いていた時、目の前に映る人物を見つけて…ここ数日忙しなく動いていた私の動きはついに静止した。
壁にもたれるようにして腕を組んでいる。目元は目隠しをしているからのその表情は詳しく見て取れないが、ただごとじゃない雰囲気なのはすぐに分かった。
トントンっと二度胸を叩き、その人物へと歩みを近づけていく。
「どうして家に帰って来ないの。ずっと職員寮に泊まってたの?」
久しぶりに聞くその声は、何だかいつもよりも少し低く聞こえる。久しぶりだからだろうか。
「電話しても出ないし、メッセージも見てないよね」
少しだけ攻めるようなその言葉に、何故私がそんな事を言われないといけないんだという気持ちになる。こっちは彼とその彼女に気を使ったというのに。
壁に預けていた背をゆっくりと起こすと、悟は私の目の前で足を止めた。