第14章 見たくない
だけど次の日、私のこの気持ちはあっけなく砕け散る事となった。
生徒達の任務の付き添いを終え、一年生3人組はお昼ご飯を食べに行くらしく別れてすぐの事だった。
自分は高専に戻ろうと、またしても補助監督の迎えを待っていた時。
平日の昼間でも人混みで賑わう交差点、横断歩道の前で信号待ちをしている時だった。
ヒュッとまるで喉から息が止まるみたいな音がする。
胸が張り裂けるほど痛かった。
キリキリと音を上げる心臓が、今にも壊れてしまいそうで。
ただひたすらに、涙を堪えるようにして唇を噛み締めるので必死だった。
だって目の前には黒髪の悟と、その隣には昨日見た女性がまたしても微笑み合いながら腕を絡めていたからだ。
嘘だと思いたかった。昨日の事も…全部全部。
だけれど2日連続でこんな光景を見てまで、私の情緒が落ち着いていられるほど大人でも無かった。
信号が赤になり、楽しそうに話している二人がこちらへと近付いてくる。こんな光景見ていたくない。早く逃げないと、早く悟に見つからないように逃げて逃げて遠くへ行かないと。
そう思うはずなのに、私の足にはまるで根が生えたみたいに重く固定されていて…
こちらへ向かって来ている悟の視線が、ふと私を捉えた。