第14章 見たくない
ギリリと奥歯を噛み締めた。多分、歯が欠けそうなほどに強く噛み締めたと思う。
だけれどそんな私の行動とは対照的に、傑はくるりと私の方へと振り返ると、背中を優しくぽんぽんと撫でた。
「ヒナ、私から言える事が一つだけある」
「……な、に…?」
「悟を信じて」
「…………」
「悟は、絶対に君を傷付けるような事はしないから」
「……っ……」
その傑の言葉に、胸のつっかえが少しだけ軽くなる。
悟にも以前言われたその言葉は、傑の言葉になって冷静に私の中へと落ちていく。
悟を信る。
悟は私を傷付けたりしない。
そうだよ。今はとにかく悟を信じないと…自分の考えだけで行動して、あの時は完全なる勘違いだったじゃないか。きっと今回もそうだ、私の勘違いに違いない。
傑だってこう言ってくれているんだから。
私が今やる事は、悟を疑うことじゃなく…信じる事。