第3章 婚約者
お店を出ようとした所で気が付く。
「悟、そういえば目隠ししなくて良いの?疲れるでしょ?」
「あぁ、まぁ今日くらいはね」
「大丈夫だよ、もう親達も帰ったんだし。悟の青い瞳綺麗でいつまでも見てたくなるけど悟の目が疲れて使い物にならなくなったら日本は大変な事になるからね!」
そう言った私に悟は少し驚いた表情をしたあと、ふっと笑うと「本当にお前のそういうところだよ」と言って優しく目尻を下げた。
「そういうとこ?」
「本当天然人たらしなんだから」
「???」
そんなやり取りをしていると悟のスマホが音を上げて、それに対して悟は「はぁ、こんな日まで仕事かよ」と大きなため息を吐き出すと嫌々ながらスマホを取り出し電話に出る。
悟は忙しい。一級術師の私なんか比にならないほど多忙だ。
月の半分以上は出張で高専を留守にしているんではないだろうか。それほどまでに呪術界は人不足とともに、特級に対抗できる術師がほとんどと言って良いほどいない。
「なーに伊地知、僕今日すっごい大事な日だから連絡するなって言ったよね」
どうやら電話の相手は伊地知君らしい。不機嫌そうに話す悟に対してきっと電話越しの伊地知君はてんやわんやしているんだろうな…
「はぁ!?それ僕じゃないとだめなの?雑魚案件じゃん。あーはいはい、いつも通りおじいちゃん達の嫌がらせかなんかか」
数分伊地知君と何やら話をしたあと、悟は電話を切ると私の方へと振り返り申し訳無さそうに眉を垂れ下げた。
「悟、大丈夫?」
「ごめん、僕これから出張になっちゃったよ。このまま行かないと」