第14章 見たくない
早足で高専内の石畳の階段を登り切った所で、見慣れた背中が視界に映る。
その瞬間、私はいてもたってもいられない気持ちになり、ジクジクと痛む胸から手を離すと、目頭が熱くなるのを堪えながら勢いよくその背中へと飛び込んだ。
飛び込んだその先の人物からは「うおっ、何だ?」と驚いたような声が聞こえてくる。
私はその人物の背中辺りの服をぎゅっと強く握りしめると、その人物は背後からしがみついているのが私だと気が付いたのか「どうしたんだい?」と優しい声を落とした。きっと何かがあったとすぐに理解したんだと思う。
「…すぐる」
「うん」
「…私」
「うん」
「胸が痛くて、苦しくて…どうにかなっちゃいそうで…」
「…うん」
「どうしたら良いか分からなくて…見なかった事にしたいのに…でも何も無かったみたいには出来そうもなくて…」
「…うん」
「どうしたら…いいかなぁ。どうしたら、この痛みは消えてなくなってくれる…?」