第14章 見たくない
胸がキリキリとする。
痛い。
まるで傷口が膿んだみたいに痛い。
あの時とは比べ物にならないほど痛い。
何でだろうか、直接目の当たりにしてしまったからだろうか。
だけどまだ、浮気だと決まったわけではない。
うん、そうだよ。きっと何か理由があるはずだから。
私は強く拳を握りしめると、震える腕を押さえ付けるようにして誤魔化しながらその場を走り出した。
任務後、補助監督が迎えに来てくれるのを待っていたためやはり歩いて帰る旨を伝える。
今は、誰かに会うような気分にはなれない。だってきっと自分は酷い顔をしている。補助監督の子に会えばきっと心配をかけてしまう。私は動揺する気持ちを落ち着かせるようにしてひたすらに走り続けた。
走って走って走りまくって。こんな時、体力があって良かったと思う。さっきの光景を何とか掻き消しながら走り続ければ、1時間後には高専へと着いていて、息を切らしながら門をくぐる。
だけれど走りを止め、呼吸を整えた瞬間、先ほどの光景がまるで走馬灯に映る影のように蘇ってきて、私はぐしゃりと胸のあたりを握りしめた。