第14章 見たくない
ドクンドクンと胸の音が大きく鳴る。
シンプルではあるが、綺麗に着飾った悟。そんな彼に負けず劣らずな美貌を持った隣の女性。
悟の腕に親し気に絡められた腕。
二人の微笑む顔。
遠いはずなのに、楽しそうな笑い声が今にもこっちまで聞こえてきそうだ。
何故髪は黒いの?何故瞳は黒いの?
もしかして…私にバレないため?私と婚約していると知っている人達に見つからないようにするため?
出張は?任務は?その女性は誰?こんな所で二人で何してるの?
聞きたいことは山ほどあるはずなのに、私の足は1ミリだって動こうとはしない。
そういえば以前にも彼の浮気を疑った事があったっけ。結局は勘違いだったのだけれど…
だけどその時悟は確かに言っていた。私を裏切るようなことはしないと、私を傷つけはしないと。
悟を信じなきゃ、きっとあの光景には何か理由がある。あの時あぁ言ってくれた悟を、私は信じないといけないのに。
けど…でも…
もしこれが本当に浮気だったら?
いや、浮気というよりかは…彼女が本命で、本気の恋にもし落ちているんだとしたら?
だってあの目立つ髪色をわざわざ変えてまでいるんだ。気まぐれや偶然だとは思えない。