第14章 見たくない
え?だとか、は?だとか…そんな声を出したと思う。
だけれどあまりに受け入れ難い現実に、私は言葉を失いただ唖然と立ち尽くす事しかできなかった。
腕に絡んでいる女性はもちろんの事、私が言葉を失ったにはもう一つ理由がある。
あの、誰をも惹きつける綺麗な白髪と空を閉じ込めたような碧色の瞳が無かったのだ。いつも通りサングラスはしているものの、その髪は黒く、そしてサングラスの隙間から見える瞳も漆黒に染まっていた。
だけど私が彼を見間違えるはずがない。
たとえ髪が黒くとも、瞳が漆黒だろうとも。
見間違えるはずがないのだ。
それはつまり、あのいつもと明らかに見た目の違うあの男性は間違いなく私の知る婚約者で、そして五条悟だということ。
髪が黒かろうが、瞳が黒かろうが彼が目立っているのはいつも通りらしい。それはそうだ、顔の形そのものを変えてるわけじゃない。ただイケメンの髪と瞳の色が変わっただけ。
何ならいつもより大人っぽく、色気溢れる雰囲気すら醸し出している。
だけど、私が気になるなはそんなことじゃない。私が言葉を失ったのはそんな理由じゃない。
これって…浮気…だよ、ね…