第14章 見たくない
「…………」
ヒナが出て行った職員室で一人、五条は唖然と立ち尽くしていた。
昔からそうだ、幼なじみという何でも話せてしまう仲が故に、喧嘩することもそう少なくはない。
まぁいつも決まってくだらない事が原因なのだが、今日も本当にどうでも良いような事が理由だった。
それがいつの間にやらヒートアップし、売り言葉に買い言葉。何なら最後はお互い引けなくなってしまう事も少なくはない。
「はぁ…最悪だ…」
最近は喧嘩する事もなかったのに。なんならすごく仲良しでラブラブだと言っても良いレベルだった。まぁそう思っているのは僕だけだろうが。
だからつい言い過ぎてしまった自分に、彼女が部屋を出て行ってから「やばい」なんて焦り始めたほどだ。
うん、まるで子供みたいだ。子供同士の喧嘩と同じレベル。なんなら子供の方がまだマシな対応が出来ていたかもしれない。
「この感じだと、今日仲直りするのは難しそうだな」
学生時代に喧嘩をして、二人で作ったルールを思い出す。喧嘩はその日のうちに仲直りすること。どうやら今回はそれは守れなさそうだ。何故なら彼女は今日の午後から1週間の出張に行くと言っていた。
出張前に喧嘩するとか…馬鹿すぎだろ自分。そんな余裕ないくせに…
「…はぁ」
五条は躊躇することなく大きな溜息を吐き出すと、透き通る白髪の髪をぐちゃりと握りしめた。