第14章 見たくない
「悟って本当に、昔からそういうところあるよね!もう知らない!!」
「それはこっちのセリフだけどね!良いよ、怒るなら好きなだけ怒ったら良いよ。まぁそんな事しても僕には無意味だけど」
本当に些細な喧嘩だった。
どうでも良いような、きっと数日したら忘れてしまうようなそんなくだらない内容。
だけどこの時の私達は、それはそれは繁忙期の任務やら授業の資料作成やらで追い込まれ寝不足で、互いにイライラしていたんだと思う。だからここで幼なじみというのが仇に出たのか、気心知れている仲だとこんな時ちっとも遠慮も何もなくなる。
いつもなら喧嘩しないような内容だった。そもそも喧嘩に繋がるような話でも無かったように思う。
だけれど、疲れている私にはこの時やけに悟の言ったことが癇に障って、そして悟はそんな私が癇に障ったようだった。
まさに負の連鎖。そんな感じ。
「私、今日は高専の職員寮に泊まるから!!探さないでよね!」
「怒るとすぐ出てくとか子供かよ。別に探さないし」
この悟の言葉をトドメに、私はカチーンと眉間にシワを寄せると勢い良く彼から視線を逸らすと、二人しかいない職員室を出て早足で歩き始めた。