第13章 術式
ドクドクとうるさいほど鳴っていた心臓は、いつの間にか落ち着きを取り戻し、悟に抱きしめられている身体は彼へと身を任せるようにして背中へと体重をかけた。
「今日はありがとうね」
今更ながらそんな事を口にしたのは、先ほど悟が言っていた「全部僕に任せて」という言葉の意味を理解したからだ。
服を脱がせてくれようとした彼、身体を洗ってくれようとした彼。それはどこからどう考えても、今日の事で怪我をした私をサポートしようとしてくれていた事だと気が付く。
そんな私の突然の言葉に、悟は一瞬目を丸めキョトンとすると、首元に埋めていた顔をゆっくりと持ち上げた。
「これは僕の自己満だよ。それに結局喜ばせてもらってるの、僕の方だしね」
クスクスと小さく笑う悟は、再び私を引き寄せるとその逞しい腕に力を込めた。
「お風呂から上がったら髪乾かすのは僕にやらせて。その後はご飯食べてゆっくりテレビを観て早めに寝よう。しかも寝る時は僕の子守唄付きだよ」
「子守唄歌ってくれるの?特級術師の子守唄付きなんて、凄いサービスだね」
楽し気に目尻を下げる悟を振り返りながら、私も釣られるようにして小さく笑えば彼はそんな私を見て嬉しそうに表情を和らげた。