第13章 術式
着いたのは家の玄関先。悟は私を抱えたまま器用に鍵とドアを開けると家の中へと入っていく。
悟が靴を脱いでいるのを見て、あ、そういえばベッドから抱えられてきたから靴を高専に置いてきちゃった…などと思っていると、悟はその綺麗な顔をニッコリとして見せる。
「今日は全部僕に任せて」
「…??」
悟の言っている意味が良くわからなくて、ただただ彼に抱えられたまま黙っていると、悟はその足をリビングではなく脱衣所へと向けた。
ストンと下され久しぶりの床の感覚へ足を踏み込めば、戦闘中に頭でも打ったのか少しだけ目眩がする。
「おっと、大丈夫?」
「あ、ごめんね。少し目眩がしただけ。もう平気だよ」
立ちくらみのようなものは一瞬したが、すぐさまそれに気が付き支えてくれた悟の腕をするりと離せば、どうやら目眩は治ったらしい。
「だけど今日は僕が全部やるからね、大丈夫だよ。ヒナはゆっくりしてて」
その言葉とほぼ同時に私の服へと白い手が伸びてくると、上着のチャックへと触れ、それがジーッと乾いた音を出しながら下りて行く。
「…悟?私上着くらい自分で脱げるよ?」
どうやら風呂に入れという事らしい。と気がついたのは、自分がなかなかに埃まみれで泥だらけだった事に気が付いたからだ。もちろんそんな私を運んでいた悟の服にも汚れが付着してしまっている。