第3章 婚約者
悟はゆっくりと立ち上がると、私の隣に来てそっとしゃがみ込んだ。
悟の右手が私の左頬に触れる。
その瞬間、ピクっと思わず身体が小さく反応して私を見下ろす悟をジッと見上げれば、悟は真剣な表情で私を見つめている。
ちょっと待って…キ、キスってどうしたら良いの…?そんないきなりどうしたらいいの…??
とりあえず目瞑るんだよね、いつ?いま?まだ?もう少ししたら??
え?てゆうか本当にこれでキス出来たら私達婚約して結婚するの??
もうどうしたら良いのか訳がわからず頭が混乱していると、悟はそんな私を見て優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ」まるで私を安心させるような優しい声が聞こえてくると、悟はそのまま私へゆっくりと顔を近づけ首を傾けた。
青い瞳が閉じられ瞼が伏せられる。キラキラとした白いまつ毛と唇が触れる瞬間、悟は一瞬動きを止めると。
「知ってたよ、お前が僕を男として見てないことくらい。だから今日からは僕を幼なじみとしてじゃなく、1人の男として見てもらわないとね」
「…んっ」
そっと触れた唇。
温かくて優しい、触れるだけのキス。
心地良いと思った。
悟から伝わってくる熱が
私の頬を撫でるその掌の温もりが。
互いが重なり合う特別な感覚が。
ただ、私を優しく包み込む悟の体温が。
とても心地良いと、そう思った。