第13章 術式
辺り一面には彼女の領域が展開される。
その数秒後、解放された空間に降り立った五条はヒナの前で立ち止まると、指2本を額へトンッと押し当てた。
「お疲れ様、少し眠ろうか」
その瞬間、ぐらりと彼女の身体から力が抜けて倒れていく。五条はそんな彼女を大切そうに軽々と横抱きにすれば、腕の中で眠る穏やかな表情に目尻を下げた。
「まったく、いつも無茶するんだから。僕の心臓がいくつあっても足りないよ」
ヒナの実力が十分あるとは分かっているが、好きな女性が危険に晒されるのはいくら最強の五条といえど、もちろん心配だ。
しかしながら、特級呪霊を領域内に引き摺り込んでから、ものの数秒で、勝負をつけるとはさすが僕の好きな人だと鼻が高い気持ちもあった。そして何より僕の婚約者女の子なのにカッコイイ!可愛くてかっこいいとか僕より最強なのでは?なんて実はニヤニヤしながら思っている。
「椿先生ー!!!」
ヒナを抱えた五条の背後から、そんな生徒達の大きな声とバタバタと走る足音が三つ聞こえてくる。
「え?あれ?何で五条先生がいるん!?」
「椿先生は無事ですかっ」
「気絶してるじゃない!」