第13章 術式
しかしながら、五条はそんな彼女のギャップがたまらなく好きだった。
普段は明るく元気で負の感情などとは程遠そうな彼女が、仲間を守るため我を忘れて大暴れするのだ。
正直言って、その強さと逞しさがたまらなくカッコ良く、そして愛しいとさえ思っていた。
それゆえ、今日もまた五条はそんな彼女を見下ろし楽しそうに笑っている。
教職につき少しは落ち着いてきたのか、このような状況になる事はほとんどなかったため、ヒナが暴れている姿を見るのは随分と久しぶりだ。
まぁ彼女がやられるという選択肢はないが、後で夜我学長あたりから説教をされたら面倒だ。山の崩壊を避けるためにそろそろ止めに入らないといけない。呑気にそんな事を考えながら五条がポケットへ入れていた手を出した時だった。
「領域展開」
彼女まではかなりの距離がある。しかし五条の見えすぎる目には彼女の口元がそう告げたのが確かに分かった。
あぁ、少し遅かったか。
だが、勝負ありだ。