第13章 術式
一級術師の中で最も特級術師に近いと言われている人物が一人いた。
それが五条の婚約者である椿ヒナだった。
身に持って生まれた呪力量は多く、恵まれた術式は呪術界でも有名なモノだった。
呪力量も十分、実力も十分、しかしながら彼女が特級術師になることが出来ない理由が一つあったのだ。
それは…
仲間が危険に晒された時、自我を失い我を忘れてしまうということ。
仲間の死に極端に弱く、そして脆かったのだ。
呪力を扱うには負の感情が必要だが、理性を失うような行動は己の死を意味する。それほどまでに呪力を扱うものとして、呪霊に関わる際は己を乱してはいけないということ。
彼女をよく知る人達は皆口を揃えて言う。彼女は優しく純粋なのだと。それゆえ仲間が痛めつけられる様を見ると別人のように理性を失った。
子供時代、自身の護衛が目の前で呪霊に殺されたのがキッカケだったそうだ。
そして幼い頃から彼女と時間を共にしてきた五条だけが、それを止めることが出来るただ一人の人物だった。