第11章 甘い休暇
水族館に入った瞬間、私は「うわぁっ」と小さいながらにも歓喜の声を上げた。
高級ホテルの最上階に位置した水族館は、想像していた普通の水族館とはかけ離れた見栄えをしていたからだ。
一面ガラス張りにされた景色は、これでもかというほど街一帯の夜景を映しだし。そして色々な形をした小ぶりな水槽がいくつも重なるようにして置かれている。
赤や青、紫といった落ち着いた色のライトで水槽が照らされており、夜景とのコントラストに一瞬で目を奪われた。
「悟、凄いね!すごく綺麗」
高級ホテルの最上階だからか、子供連れはおらず大人なカップルがちらほらといるくらいだ。そのためか静かで落ち着いた空間が広がっている。
しつこいくらいに凄い凄いと何度も言いながら綺麗〜と水槽を一つ見るたび呟く私に、悟は嫌な顔をすることなく毎回凄いね綺麗だねと優しく答えた。
青く綺麗な熱帯魚を見つけ、なんとなく悟の瞳に似ているねと声をかけようと彼を見上げて、呟こうとしていた言葉を止める。
それは、隣の彼があまりに穏やかに…そして嬉しそうに私を見下ろしていたからだ。
サングラスの隙間から見える悟の瞳が綺麗だった。夜景と水槽の煌びやかな光に反射してキラキラと輝きを放っていたからだと思う。