第11章 甘い休暇
水族館に行くまでの間、少しだけ休憩をすると言っていたはずなのに、私は今まさにベッド上で覆い被さってくる悟と激しく唇を交わしている。
可愛い可愛いと何度も耳元で囁かれ、激しく触れ合う唇とは違い、その手つきはとても優しく私を抱きしめる。
婚約者になってから何度も繰り返してきたキスに多少は応える余裕が出てきたと思う。だけどその反面、ドキドキとうるさく鳴る心臓は全くと言って良いほど慣れることはなくて。むしろどんどん鼓動の速さは悪化していっている。
何で?どういうこと?と思いながらも、息をつくたび絡み合う視線に、水音を鳴らし触れ合う唇に、悟の鼻を抜けるようなくぐもった声を聞いた瞬間身体中が痺れて馬鹿みたいにマヒしていく。
「…んっ…さと…ッ…はァっ」
「ふふっ、目がトロンとしてきてるね」
必死に彼の首へしがみ付く私とは違い、悟は余裕そうに目元を細めると私の唇をペロリと舐めとり乱れた髪をそっと整えてくれる。
「このままだと本気で押し倒したくなるから、そろそろ行こうか」
「…へ?」
「あれ?もしかしてこの先を期待してた?」
イタズラ気にニヤリと口角を上げた悟に、カッと赤面した顔を晒しながらも睨み付ければ「違う!!」と少し大きな声を出して慌ててベッドから起き上がる。
てゆうかもう押し倒してるじゃん!!って言葉は喉の手前で飲み込んだ。