第3章 婚約者
いやいやいや、それにしても分かりにくすぎるでしょ!私あんなに騒いでお酒飲んでたのに!!
「悟はこのままでいいの?私達幼なじみにのに婚約するんだよ?」
半年前から婚約話を知っていたはずなのにやけに落ち着いている悟へそう問えば、悟は当然のように「良いよ、無問題」と言って二つ目のお茶菓子を呑気に開けている。
「え!?良いの!?」
「うん」
「えぇ!!」
「ヒナは嫌なの?僕と婚約するの」
乗り出していた身体を元に戻しすとんと座布団へと座り直せば、目の前の悟が少し寂しそうに眉を垂れ下げて私を見つめる。
「嫌…とかではないよ…もちろん。でも私達幼なじみだし…そんな風に考えた事もなかったでしょ…」
私は昔から悟のこの顔に弱い。喧嘩してもこの顔をされるといつもついつい許してしまうのだ。
悟とは仲良いし一緒に居て素でいられるし楽しい。だけど婚約ってことはいずれ結婚するってことで…そんな事考えたこともなかった。
「じゃあ問題ないね」
「え?問題ないの?」
「だって僕のこと嫌ではないんでしょ?」
「それはそうだけど。でも婚約して結婚するってことは、私達恋人みたいなことをこれからするってことだよ?手繋いだり…キスしたり……あと…えっちな…ことしたり…悟はそんなこと私と出来るの?」
自分で言った言葉に思わず赤面しながらうつむき、チラッと悟を視界の片隅で見れば、悟は私の言葉に驚いたようにキョトンとしている。