第11章 甘い休暇
うん、そうだった。ただでさえ悟は目立つというのに、そんな悟が婚約指輪の話をしているのだ…目立つなという方が無理な話で…
きっとこの中には悟へ声をかけようとしていた人もいるに違いない。だけどそう思うと、今日婚約指輪をしてきて心底よかったと思うし、待ち合わせ時間よりも早く来て良かったと思った。
もしも私が遅れて来ていたら…悟は可愛い女の子にナンパされていたかもしれない。そう思うと何故だかやけに胸がモヤモヤとしてきた。
めちゃくちゃ注目されている中、悟に引かれ歩き始めれば。嵐が去ったかのように周りの人もこちらへと興味をなくしたのか、その場を後にする。いや、本当に皆んな悟を見たくて立ち止まっていたんだな…
昔から分かってはいたけれど、悟のモテっぷりは本当にすごいようだ。というより…そんな人が私の婚約者だと思うと、自分の平凡具合が申し訳なく思った。
「どうかした?」
「ううん、何でもない」
悟を見上げ思わずジッと見つめていると、悟が不思議そうに首を傾げるものだから、私は慌てて首を横に振った。