第11章 甘い休暇
「僕、今初めてこの顔で良かったと思ったよ」
「えぇ!それは流石に大袈裟でしょー」
「大袈裟なんかじゃないよ、本当にそう思ったんだよ。だってヒナがそんなこと思ってくれてたなんて知らなかったから」
「言ったことなかったかなぁ?」
「ないよ!ヒナは僕の顔になんてちっとも興味ないと思ってたし」
「そんな事ないよっ」なんてクスクス笑っていると、悟が私の左手を見てピタリと動きを止めた。
「それ、付けてきてくれたんだ」
悟の視線の先には、左薬指に付けられたキラキラと輝くダイヤの付いた婚約指輪。
「うん、せっかくだし付けて来ちゃった」
あの婚約の日以降、すっかり箱に仕舞われていた婚約指輪。もともと普段使いする物でも無いと思うが、職業柄絶対に傷が付いたり無くしてしまう可能性があるため付けられていなかった。なんなら休日もいつ呼び出されるかわからないから、時々付けるなんてことも出来なくて…
だけどせっかく悟が私のために選んでくれたものだ。もちろん出来ることならまた付けたいと思っていて、やっと今日付けることが出来た。