第11章 甘い休暇
今行ったらすごい見られるんだろうなぁと思いながらも、あの視線の中何食わぬ顔でスマホを見ている悟につい感心してしまう。
さて、いこうかな。と一歩足を踏み出したところで、どうやら私の気配を感じたらしい悟がスマホからパッと顔を上げキョロキョロと辺りを見渡し、私と目が合った瞬間まるで花が咲いたみたいにぱぁっと笑顔を向けた。
壁に寄りかかっていた身体を起こしスマホをポケットへとしまうと、軽く手を振りながらニコニコとその長い足を使って近付いてくる。
「ヒナ!」
ただでさえ目立っていたイケメンがさらに全力の笑顔を向けたのだ。悟を囲っていた周りの人達はギョッと目を見開いたあとその悟の視線を辿るようにしてこちらを見た。
いやーこんなイケメンの待ち人が私みたいな平凡女で申し訳ない…なんて思いながらも悟へ笑顔で手を振り替えせば、悟は嬉しそうに私の元へと軽く走ってくると私を見下ろしニッコリと微笑んだ。
「おまたせ、悟」
「だいじょーぶ、全然待ってないよ」
生徒達がいつも五条先生は微妙に遅刻してくると言っていたのを思い出し、てっきり遅刻して来るかと思ったけどまだ待ち合わせの15分も前だ。もし私が待ち合わせピッタリに来ていたら悟をあの視線の突き刺さる空間で待たせることになるところだった。あぶないあぶない。