第3章 婚約者
「お久しぶりです、今日はよろしくお願いします」
そんな父の挨拶をする声がしたかと思うと「こちらこそよろしくお願いします」と父と同じ歳くらいの男性の声が頭上から聞こえてきた。
このままずっと顔を伏せてるわけにはいかない…そう思い意を決してゆっくりと顔を上げていく。
だけど次の瞬間、私は大きく目を見開き言葉を失った。
「え…なんで……」
何故なら、目の前にはここにいるはずのない人物が座っていたからだ。
「やぁヒナ、二日酔いは大丈夫?」
和服に身を包んだその人物は、眩しいほどにとても和服が似合っていて一生懸命着飾った私なんかよりよっぽど綺麗だ。そして彼は唖然としている私にクスッと小さく笑うと珍しくサングラスも目隠しもしていない碧色の瞳を細めると優しく目尻を下げた。
それにしても目隠してないの珍しいな…まぁそうか、普通お見合いで目隠す人なんていないか。
ってそうじゃなくて!!
「何で悟がいるの!?!?」
思わず大きく出てしまった声にハッとして口を塞げば、隣にいた父と母が私を鋭い視線で睨み付けてくる。
そんな私を見て楽しそうに小さく笑った目の前の人物は、紛れもなく私の幼なじみの五条悟だ。
何で悟がここにいるの!!どういうこと?理解が追いつかない!情報が全く完結しない。