第9章 嫉妬とやら
とさっと軽くシーツが擦れる音がして、自分がベッドへと降ろされたんだという事がわかる。
値段を知るのが怖いほど、やたらふかふかした高級ベットへと自身の身体が重力に乗せられ沈んでいく。
もちろん真上には悟の綺麗な顔が私を真剣に見下ろしていた。
「…悟?」
「なぁに?」
「…どうしていきなり寝室に来たの?」
「言ったでしょ、ステップアップしようかって」
ステップアップとはすなわち、進歩すること、向上することを言うらしい。つまりは先ほどまでしていた大人なキス以上のことをしよう!というそんな意味だということだろうか…
動揺を隠せず大きく目を開く私に、悟は穏やかに微笑む。彼は私が嫌がることは絶対にしない。それは長年の幼なじみとしての絶対的信頼で、きっと今私がもしも嫌がれば何もしてくることはないだろう。
だけど、理性が限界を迎えそうらしい悟。いや…もうすでに迎えてしまったんだっけ。私に対して理性やら限界やらが発動する事がそもそも驚きなのだが、目の前であまりに真っ直ぐに私を見つめる悟に、思わず見慣れているはずのその美貌に目を奪われた。
「大丈夫だよ、僕だけを見てて」
「…うん」
「僕だけを感じて」
「…うん」
「僕もヒナだけを感じるから」