第9章 嫉妬とやら
「はぁ」と静かなため息が聞こえてきた後、悟は少しばかり躊躇ったあとゆっくりと口を開く。
一体何を言われるんだろうか。もしかして…私のキスが下手だったとか…?いやもしかしたら下手すぎてキスって分からなかったとか言われるのかも。
自分でも分かってる。どう考えたって上手く出来ていなかった。
だけどそんな私の思考とは裏腹に、悟から聞こえてきた言葉は考えもしていなかったような言葉で。
「僕もう理性が限界を迎えそうなんだよね。いや、もう迎えた、迎えてるわ」
「へ?」
「だからさ、少しステップアップしようか」
そう悟が言った瞬間ふわりと身体を抱き抱えられる。190センチの彼に持ち上げられればそれはそこそこの高さで、慌てて悟の首へとしがみ付けば次の瞬間には辺り一面の景色が一変していた。
それが悟の仕業で、そしてトんだんだという事をすぐさま理解する。
一瞬にして移動したのだが、その見覚えのある景色に軽く目を見開く。何故ならそこは私と悟の住んでいるマンションの一室だったからだ。しかも寝室。え?何で家の寝室にトんだの?
夜の帰宅時間が遅い彼が、家まで一直線にトべるようマップを敷いているのはもちろん知っていた。と言っても突然目の前にトんで現れるなんて事は今までなかったのだが。
私達は今どう考えても我が家の寝室にいる。