第9章 嫉妬とやら
そっと重なった唇はゆるく開かれており、混乱する頭の中舌先をそっと悟の口内へと入れていく。多分本当にちょびっとだ。ちょびっとだけ入れた舌はゆるりと上下するようにして動かすので精一杯で、そんな私の動きに痺れを切らしたのか、先ほどまでされるがままだった悟がいきなりガッと私の後頭部を引き寄せる。
「…んンっ」
本当申し訳ばかりにしか入れていなかった私の舌先は、悟の長い舌によって上手く絡みとられあっという間に深く混じり合う。
次第にくちゅくちゅといやらしい水音を立てながら絡まり合う舌先は、痺れるような感覚の中甘く麻痺していく。
時折聞こえてくる悟の呼吸音がやけに鮮明に耳に届いて、何故だかたまらない気持ちになった。
「…ふぇっ…んッ」
先ほどまで自分がしていたものとはあきらかに違うソレに、やはり私は着いていくのがやっとで、いつか私からのキスでも悟を満足させてあげられるようになるんだろうかと少しばかり不安な気持ちになる。
だけどそんないやらしい事を考えている自分が恥ずかしくて、というよりは…甘くトロけるような口内の刺激に思考はあっという間に繋がる唇に戻された。
しばらくして銀の糸が引くようにして離された唇は、互いの唾液のせいかやけに潤いを増していて「待ちきれなくて結構僕がしちゃったね」という悟の甘い声にボーッとした表情で彼を見上げれば、悟はそんな私の表情を見てハッとしたように息を呑んだ。