第9章 嫉妬とやら
静かな室内にはちゅっと軽いリップ音が響く。そっと唇を離し目の前の悟を見つめれば、悟はキョトンとした顔をして私を見ていた。
「終わり?」
「え?どういう意味?」
「そんなんじゃ僕、満足出来ないなぁ」
「えぇ!!」
「もっと深いのが良い、もっと深くて濃厚なやつ」
先ほどまでの暗かった表情は嘘みたいにガラリと変わり、今はどこか意地悪気な表情で私を見下ろしている。
深くて濃厚…!?それはつまりいつもの悟がするようなキスをして欲しいという意味だろうか!?たった今初めて自分からキスをしたというのに…そんなハイレベルな事を自分が出来るとは到底思えない。
「ちょっと…それは…」そう呟きながらチラッと悟を見返せば、彼はその宝石のような瞳を潤ませ「お願い」とお得意なあの表情をしてくる。それをすれば私が流されると思っているあたり本当にタチが悪いが…わかっていてもいつも流される私も大概だ。
小さく息を吐き出すと、意を決して再び悟の頬へと触れる。いつも悟はキスをする時にどうやっていただろう。意識をした事もないけど、いつもいっぱいいっぱいでそれどころではないというのが現実だ。