第8章 呪霊の体液
「傑、さっきから誰と話してるの?」
「何でもないよ、気にしないでくれ。低級呪霊でもいたかな?」
ちょっと…このGLGの僕を低級呪霊って…せめて特級呪霊にしてくれよ、と思わずわけのわからないツッコミをしそうになる。
つーか本当に僕この2人のイチャイチャを、あと10時間くらい見ていないといけないわけ?マジで傑の前髪を引っこ抜くくらいじゃ苛立ちが治まりそうにないんだけど。
いやいやでもやはり、愛しの婚約者をこのまま傑と2人っきりにしている方がよっぽど無理だ。
そんな事をブツブツと考えながら革靴のかかとをカチカチと床にぶつけていると、ポケットの中のスマホが音を上げた。
ディスプレイに表示されるなはもちろん伊地知の文字だ。
「何?追加任務なら無理だよ。僕今前髪吊り目野郎の強制わいせつ罪特級案件中だから」
早口に話し始めた僕に対し、伊地知は「はい?え?強制わいせつ罪?」とあきらかな動揺を見せる。僕の近くでは傑が「何で強制わいせつ罪なんだよ」と文句を言っているのは無視だ。
「そう、だから悪いけど任務はキャンセルで。どうしてもっていうなら冥さんに回して。あとで金払うからって」
『五条さん!困りますよぉ、任務ではなく夜蛾学長からのお呼び出しなんです』
「なら伊地知が目隠しでもして行って来て。多分バレないから大丈夫。学長もそろそろいい年だしね」
『バレますって!五条さあーーん!!』
という伊地知の叫ぶような声を聞いた後、僕は何の躊躇もなくスマホを切った。伊地知、悪い。今日だけは許してくれ…今日だけはどうしても任務に行けないんだ。いやいつもか。