第8章 呪霊の体液
高専に着くと早足である場所へと向かう。
隠れてる?どこがだよ。残穢は残っているし呪力もダダ漏れじゃないか。どう考えても本気で隠れる気ゼロだろ。
僕はある一つの扉の前で足を止めると、何の躊躇いもなくその扉を開き中へと入って行く。
カツカツと地下室へと下る階段を降りながら室内へと足を踏み入れれば、ガランとした寂しげな部屋の中心にはテレビとソファーが置かれている。
「何これ、どういう状況?」
入り口からは後ろ向きに置かれているソファー。そこには見慣れた背中が一つ。僕の言葉にピクリと反応を見せたその人物は珍しく居眠りでもしていたのだろうか、ゆっくりとソファーの前へ立った僕を見上げた。
「バレてしまったか」
「隠れる気なんて微塵もなかったろ」
「悟が今日出張から帰って来なければ良いのにとは思ったよ」
「は?」
「私はまだ死にたくないからね」
「あぁ、そういうこと。だったらその手はなんだよ、言葉と行動が伴ってないだろ。それに珍しく寝こけてたみたいだし」
ソファーに腰をかけているのは僕の親友。しかも人前で眠ることなんかほとんどないやつが珍しく居眠りをしていた。そしてそんな親友に、膝枕をされるようにして彼の腹部へと顔をすり寄せスヤスヤと気持ち良さそうに眠っている…僕の愛しい婚約者の姿。親友はそんな彼女の背中に手を置きまるで宥めるように触れていた。