第8章 呪霊の体液
「どうしたんだい?顔が真っ赤だよ」
そんな私に気が付いた傑がニコリと笑いながら私を覗き込む。
「何でもない!!それより仲睦まじい雰囲気ってどうする?」
「うーん」と少し考えるような素振りをしたあと、傑は私の肩を抱き寄せその流れ長な瞳をさらに細めると「こんな感じかな」と言ってぎゅっと私を包み込むようにして肩を抱いた。
直ぐそばで私を色っぽく見下ろす傑を見て思う。うん、これは私が同期で友達じゃなかったら惚れてしまうやつだ。補助監督の子や他の術師の子がこの役じゃなくてよかったと思う。危うくこの魔性の男…夏油傑氏の餌食になってしまう女性が出るところだった。
昔から悟も傑もとてつもなくモテていたが、女の子に平気で酷い言葉を吐き出す悟よりも、曖昧な態度をとりニコニコと思わせぶりな雰囲気を出す癖に絶対に真剣に付き合う事をしない傑の方がよっぱどタチが悪いと確か硝子が言っていた。いつか女性に刺されるだろうとも。
今その理由が分かった。そしてやけに納得してしまった自分がいる。
「傑は罪深い男性だったんだね」
そう呟いた私に傑はクスクスと楽しそうに笑顔を見せると「何のことだか」と言いながら、帳がかかり始めた暗闇へと私達は足を進めた。