第8章 呪霊の体液
今日の任務は特級呪霊が相手だ。普段通りなら特級一体など傑一人で事足りるのだが、今日は呪霊の出没条件がとても特殊だった。
「えーと、確か出没条件は0時から3時の間に仲睦まじい男女がこの道を通るだっけ?」
特殊なその条件に資料を片手に読みながら暗闇を見つめる。
「そのようだね。まぁなんとも稀な出没条件だよ」
「歌舞伎町らしいね」と傑は続け、夜の男女を連想させる煌びやかな世界らしいその出没条件に苦笑いが漏れる。
さすがに傑は特級呪術師であるからといって、仲睦まじい男女を一人で演出するのは無理だ。特級呪霊が出没するような任務に付いてきている補助監督の女性を帳の中に入れて一瞬とはいえそれを演出するのも。
ましてや特級呪術師であり男前で独特なオーラのある傑に、恐縮せず仲睦まじい男女が演出出来る女性術師もなかなかいるわけもなく、そこで選ばれたのが傑と普段から仲も良く女性呪術師である私というわけだ。
悟は地方の出張でここ数日おらず、高専で受け持つ授業を終えてから傑と合流したわけだが、いくら仲が良いとはいえ仲睦まじい男女を演出するとはどんな雰囲気を出せば良いのか考える。
とりあえず肩を組むか手を繋いでラブラブした雰囲気を出せば良いのだろうか。その瞬間悟とベッドで交わした濃厚なキスを思い出し顔がカーっと熱くなっていく。
あれ以来、悟とのキスは触れるだけのかすかなモノから、舌と舌が絡まり合うほど深いものへと変わったわけだけれど、私はそんな大人なキスを彼と何度交わしても未だに慣れる事なくアワアワとしている。そして顔は真っ赤だ。