第8章 呪霊の体液
幼馴染同士のどうでも良いような喧嘩が、校舎を全壊させるなど誰が思うだろうか。そんな事をするくらいなら呪霊退治にその力を使ってくれなどと思うが、何度も言うが何を隠そう元々は私が悟を無視したのがいけなかったのだ。
それ以来悟と喧嘩をしても無視はしない、逃走もしないと心に誓った。まぁ何気ない喧嘩ならあれ以来もしょっちゅうしているのだが、私達はもう二度と同じ事が起きないようにルールを決めた。
一つ目はなるべく喧嘩したその日のうちに仲直りをすること。喧嘩をした状態でお互いを無視しないこと。嫌だからと言って逃げないこと。だ。まぁまるで小学生同士のお約束のようなものなのだが、私達は喧嘩をしても律儀にもあれ以来この約束を守っている。
まぁ最近では喧嘩するなんてこともそもそも無いのだけれど。
「着きました、こちらになります」
少しばかり昔の事を思い出していると、少し前を歩いていた補助監督さんが振り返り立ち止まる。
「うわぁ…」
「見るからに呪われているね」
私と傑が立つ目の前にはビルとビルが立ち並ぶ狭くて汚い裏路地。真っ暗で人が寄り付かなそうなその場所は、表立って見えている煌びやかな世界からはかけ離れていた。