第1章 幼馴染は契約したい
アヴァロン学校に行くことが出来れば魔法省に入るという約束がされる。少しばかり猶予が伸びればいずれ破棄される可能性だってある。
「浅はかな考えだな、中学生らしい」
魔法省の女は煙草を吸い始める。まるで予見しえたように言う。
「だが、それじゃあ無理があるね。たとえアヴァロン学校卒業したとしても、犬小屋に入ってもらう」
「そんな……」
「ただし、私の元に来るなら話は別だ」
女は協力してやるよと煙を吹く。
「私の魔法省研究部署は長年魔力量が足りていなくてね、研究が進んでいない。そこで君が働くことを約束してくれるのなら、私が上を誤魔化してやろう。
まあ、全てはアヴァロン学校に入学できてからの話だがね。マリーさん、話は終わりました。実に父親に似た性格の娘さんだ」
女は母に話しかけ、机の上に名刺を置いた。
「受験日まで3ヶ月あまりだ。すぐ結果は出る」
女はまたなと言って、お母さんに何か話した後出ていった。正直、奇妙な助け舟に乗るような感覚がして、どうにもモヤモヤした感触が残っていた。
その事をリンゴに話すと大変だったねと相槌を打ちながら聞いてくれた。カフェテラスで紅茶とレモンケーキを食べながらリンゴはにこにこ笑っていた。
「機嫌がいいね、リンゴ」
「そ、そうかな…実は番号を消したんだ」
「番号?」
リンゴは35のマークが入っていた腕を見せる。そこに数字は刻まれていない。
「孤児に付けられた番号、あれはね奴隷契約の様な魔法が刻まれていたんだ。育て親が見つかれば番号は消せるから兄さんはとっくに消していたけど、僕は何だか消せなくて……」
「どうして?あんなに施設嫌がってたでしょ?」
リンゴは何時も研究所から抜け出して私の元に遊びに来ていた。虐待のような魔力給与を求められていたからだ。
「僕は臆病だったからね。でも兄さんの事で、 ルーナを守るのは僕の役目だと思った」
だからねとリンゴは私の手を優しく握る。
「もう、嫌な思いはさせない。隠し事もしない。ルーナが望む未来を応援する」
「リンゴ…」
「僕は未来の為に君とは違う別の学校を目指すけど、僕はずっと君のそばに居るよ」