第1章 Bocca della Verità 死柄木弔(ヒロアカ)
「違わないわ」
「…え?」
「私だって…自分の意思でヒーローになってからずっと、明確な殺意を持ってヴィランを殺してる」
「…初めて殺意を持って殺したのは?」
「ヒーローになってすぐよ…シミズ刑事の提案を受ける条件として、私はあるヴィランを最初のターゲットに指定した」
「お前になんかしたやつか?」
「いいえ…ナオの家族を殺したヴィランよ」
「恋人の仇…ってわけか」
いくら恋人のためだと言っても、憎むべきヴィランの前で脚を開き、男根を挿入されるなど、平気なわけがなかったはずだ
死柄木が珍しく気の毒そうな顔をする
「殺してやろうと思って殺した人間の、イチモツを膣から取り出すのは気が狂いそうになったわ、最初の頃はずっと吐いてた」
遠い目をして呟く歩
死柄木は、歩と自分の何が違うのか分からなくなっていた
同じように幼少期のトラウマによって個性が変異し、殺意を持って相手を殺す
でも俺はヴィランで、コイツはヒーロー
「俺たち、何が違うんだろうな」
「さっきも言ったわ、何も違わない…手を差し伸べてくれる誰かがいたかどうか…それだけ」
「ガキの頃の転弧に聞かせてやりたいぜ、お前ともっと早く出会ってれば…」
そこまで言いかけてやめた
早く出会っていれば何だと言うのだ
自分は別に今の自分でいいし
ヴィランになったことを後悔もしてない
全部ぶっ壊れればいいと思ってるし、ヒーローになりたくもない
ただ、心の奥底にいる"志村 転弧"を救ってやりたい
そんな甘い考えがあるのかもしれない
「あなたは間違ってない」
そう歩に言われて、何かが溢れ出しそうになった
ああそうか、俺は肯定してほしかったんだ
生きていていいって誰かに肯定してほしかった
運命のパートナー
あながち間違ってないんじゃねぇか
誰にも受け入れられることのなかった自分を肯定してくれる存在
お前がそうなら、俺もお前を肯定してやる
誰が何と言おうと歩は美しく、素晴らしい個性の持ち主だって