第15章 決別
「行ったのか。」
後ろから声をかけられたイタチは、小さく息を呑む。
それから一呼吸おいて、少し振り返った。
「…起きていたのか。」
ー態と逃がした、とみて良さそうだな。
サソリの様子から、イタチはそう判断する。
昨晩、彼がそっと抜け出して行ったのをイタチは知っていた。
行き先がエニシの元であることも。
念の為にと、彼女達の建物に潜ませておいた鴉の分身で、イタチも一部始終を見ていたのだ。
その際に言っていた’’誼’’、更には’’声をかけておく’’というキーワードから、不穏なものを感じ取った。
近頃、オビトの動きも表立ってきている。
となれば、暁という組織を動かしてでも部外者であるエニシを排除しようと動き出しても不思議ではないと判断したのだ。
「あぁ、今起きたところだ。」
「報告がてら、一度アジトに戻るか?」
「そうだな。それから帰った方が煩わしくなくていいだろう。」
サソリの様子は普段と変わらない。
追う気もないのだろう。
態々、場所を変えてまで二人で話していたところをみるに、前々から二人はあんな風にひっそりと言葉を交わしていたのだろう。
自分の知らないエニシとの時間をサソリが共に過ごしていた、という事実は何処となくもやもやとした蟠りを生んだ。
ーあんな雰囲気のエニシは久しぶりに見たな。
そう思った時に、ふと違和感に気づく。
あの時、サソリはエニシを違う名で呼びかけていた。
何故かそれに応えたエニシは、まるで雰囲気の違う様子だった。