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もう一度、を叶えるために。second

第12章 懐かしい顔と新しい顔



そこにあったのは、花が咲き乱れる楽園に草花を慈しむ天使の姿。
長い金の髪はそよ風に揺らされて揺蕩い、背から伸びる大きな翼は純白。
真っ白なドレスに金のベルトと金の腕輪。
金の錫杖の先には眩い翡翠が複雑に細工されていた。

はっと目を瞠って瞬きをした一瞬のうちに、幻術は解かれていた。

「今見たのは…。」

「私の記憶にある’’私’’よ。」

「…本当か?」

俄には信じ難い。
疑い深くサソリが見つめると、ライールは鼻で笑う。

「嘘だと断じるならそうするがいいわ。けれど、私から話すことはもう何もない。」

ライールの様子から、サソリは嘘ではないと判断する。

「…まぁいい。それで?そんな人ならざる者が何で人間のふりをしてるんだ?」

人ではない、崇高なもの。
今見た人物はそんな印象だった。
敢えて、今の姿からは想像のつかない姿を見せたのだ。
少なからず、ライールの中にはその時代の拘り…言うなれば’’誇り’’があるのだろう、とサソリは思う。

彼の問いに、ライールは憎悪を滲ませた瞳を向ける。

「追放されたから。ありもしない罪を着せられて、呪いを課せられて。」

「呪い…?」

引っかかる言い回しだ。

「私を含めた私の周りにいる人間には必ず不幸が訪れる。それは死かもしれない、裏切りかもしれない。…哀しみと怒りに満ちた人生を繰り返す’’悲嘆の輪廻’’、それが私が受けた呪いよ。」

赤い眼で薄っすらと笑う彼女はさっき見せられた姿からはほど遠い。
神聖とは真逆の悪鬼を思わせる。

「くだらない好奇心で私の側にいれば、身を滅ぼすことになるかもしれないわよ?」

その言葉にサソリは冷笑する。

「そんなことくらいで不幸になるだと?やれるもんならやってみろよ。誰が俺を貶められるのか見ものだな。」

彼ははじめから’’独り’’だ。
彼を殺せるのは彼より強い者でなくてはならず、彼を裏切るには彼から深い信頼を得ていなければならない。
そのどちらの条件にも当てはまる者をサソリは知らない。
存在しない、と言った方が正確だろうとも思う。

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