第10章 ルーツを探しに出かけましょ
あれから、鬼鮫さんは戻ってくることはなく、私は私で遺品というか、ミアさんが残していった数少ない物を見せてもらったり、エルフについてもう少し話を聞いたりしていた。
それも話が一区切りついて、私もここの村(?)を見学させてもらうことにした。
見える範囲の景色は凄く綺麗で幻想的。
空に浮かぶ天の川もすごく綺麗だ。
イタチも一緒だったら良かったのになぁ…。
私は手近な所で寝そべった。
どこもかしこも水辺で、水のいい匂いがする。
手を伸ばすとすぐ近くには水がゆっくり流れてるから、ちゃぷちゃぷっと触れたりする。
夜空に散りばめられた光を眺めながら、今日を振り返った。
エルフって不思議な種族だと思う。
話せば話すほど、成り立ちというか在り方が独特のように思えてくる。
彼らが最も尊ぶものは調和であり、巡りゆく自然はエルフがいるから成り立つのであり、同時に巡りゆく自然があるからエルフが成り立つという。
言葉で教えてもらっても、イマイチ掴みどころがなかったけど、感覚としての捉えどころはなんとなく納得できるものだった。
分からないのに分かるという、なんともちぐはぐな状態ではあったけれど、素敵な考え方だなぁっていうのが正直な感想。
「何見てるの?」
「うぉわっ!」
びっくりした!!
「ふふっ。意外ね。あなたはもっと気配に敏感なんだと思ってたわ。」
「…偏見だと思います。」
いきなり、ざばっと水の中から出てこられたら誰だってびっくりすると思うの。
ふぅ…と息をついて胡座をかくと、目の前の人に向き合った。
上半身は水から上がり、肘をついてこちらを見る女の人。いつの間にやら人魚になってる感じ?下半身は魚になってる。
たしか、昼間にライアさんの部屋にいた人だよね。
思わず、まじまじと見てたらくすりと笑われた。
「珍しい?」
そう言って、下半身の尾鰭でぴちぴちと水面を叩く。
「すっごい珍しいです。」
これぞ正しく人魚姫。
自分の足が魚になるってどんな気分だろう?