第2章 ここから、また始まる
「ほら、エニシ。そんなとこでうたた寝してると風邪引くわよ。」
シズネさんに肩を揺すられ、ぼんやりと目を開ける。
久々に兄ちゃんの夢を見た。
「すみません、つい…。」
私は寝心地のいい椅子から立ち上がり、ぐうっと体を伸ばした。
「嫌な夢でも見たの?時々魘されてたわよ。」
心配そうに顔を覗き込んでくるシズネさんに、私は笑って返す。
「ちょっと兄の夢を見てました。」
「そう…。」
呟きながらシズネさんは目を伏せる。
私の事情は大体知ってるから、どう返していいのか分からないのかも。
「ふふっ…。」
「なっ、どうして笑うのよ。心配してるのよ?」
シズネさんがあんまりにも不服そうに言うから、更に笑ってしまった。
「いや、すみません。なんだか、会った頃の時と反応が全然違うな、と思ったら可笑しくなっちゃって。」
「あの時は…!あの時は、しょうがないじゃない。だってあなた脅す様に弟子入りを迫るんだもの。」
まぁ、そりゃそうか。
あの出会いじゃ確かにそう思うかも。