第10章 ルーツを探しに出かけましょ
『俺は暫く留守にする。その間、お前は鬼鮫といろ。』
斬不斬さん達と別れて、大急ぎで追いついた直後に言われたのがこの言葉。
いやいや何言ってるの治療してないよ、そもそも何処に行こうと言うのかねイタチ君。
ってな具合に詰め寄ったんだけど、頑として聞き入れてもらえず。
極め付けには、
『絶対ついてくるなよ?』
と念押しされた。
…フリですか?って言いたくなるくらいには念が篭ってたんだけど、私はボケることも叶わず見送る形となった。
イタチが仕事に向かってから三日が経過…。
「暇だなぁ…。ってかさむっ。」
現在地は水の国の中でも寒い地域。
薄着には堪えるくらいにはガチガチに寒い。
そして、暇すぎて暇すぎて、色々頂点を突き抜けそう…。
「…煩い人ですねぇ。これでも着てればいいでしょう。」
と言って、バサっと投げてよこされたのは暁ローブ。
「ありがとうございます…って誰の?」
なんとなく、鬼鮫さんのにしては小さいような…?
「イタチさんのですよ。」
「……え……?」
…何で持ってるんでしょうか?って聞いてもいいのかな…。
聞いたら怒られるかな…?
…でも気になるんだよね。
二人って実は仲良かったりするのかしら?
「…何を考えてるのかは知りませんが、イタチさんから頼まれたから持っているだけですよ。」
イタチが持ってて、って?
え、じゃあ他にも持ってたり…?
…下着とか持ってたりしたらどうしよう。
ちょっとドン引きなんだけど。
「失礼極まりない顔ですね。持ってるのはこれだけですよ。」
ほっ…。よかった。
…よかったっていうのもアレだけど。
「あなたという人は…まったく…。」
鬼鮫さんはぶつぶつ言いながらも本の続きを読み始める。
私はいそいそと暁ローブを羽織って丸まった。
鬼鮫さんより小さいとは言えど、私よりは大分大きいからすっぽりと埋まって温かい。
ストーブにあたりながらも、なんとはなしにぼーっと鬼鮫さんを眺めた。